「怪人二十面相」とか、「口裂け女」とか。
そういう昭和の都市伝説的な怪談とか。

「三丁目の夕日」で、東京でも昭和30年代くらいまではキツネやタヌキに化かされた、とか。

藤子不二雄のSF短編集で、山ん中に実験都市があって、その都市が人間を食う、とか。

「のび太の鉄人兵団」で、(鏡面世界だけど)学校のウラ山にロボットが都市を作ってる、とか。


そういう都市伝説や、児童文学や少年漫画の世界って、
「日常生活のすぐ隣に “異界”がある」
っていうの、定番だよね。

この、日常生活の中に“異界”が入り込んでる感というのは、東日本ならではの感覚の気がするのです。




うちの実家は愛知県だけど、
なんか愛知県って「異界」感がゼロなんだよね。

世界は隅からスミまで人間の痕跡があって。
だから児童文学でよくある、
「日常生活の中にふと、“異界”が入り込んで、
ひょんなことから主人公が異界に入ってって、そこから冒険が始まって・・・」

という余白が、
なーんか愛知県って無さそうなんだわー。


西日本もそんな感じで。
近畿地方とか九州とか、あんまりピンと来なくない?

どっすか、皆さん。



以下は岩手の話ですが。

獅子躍の庭本のご自宅が、なだらかな丘陵地帯の集落の、一番突き当りにあるので、
ご自宅から集落を見下ろすような形になる。

その見下ろした集落が、田んぼと田んぼの間に、左右から丘が犬歯状に食い込んでるような感じで。
田んぼ・平地エリアは人間界なんだけど、
そこに食い込んでる丘エリアが「人間じゃない界」
な感じなんですよ!

動物界というか自然界というか、
タヌキとかトトロとかオッコトヌシとか、
そんな感じがするの。

で、山の方を振り返ると、そこに生えてる木々も、
(いかにも「植林されました」みたいなスギとかの単一の植生じゃなくて)、
いろんな種類の木がバラバラ生えてて、
一本一本にキャラクターを感じるんですよ。

ヤナギの木が風を受けて、
周りの他の木とは違う揺れ方をしてたりすると、
おおーあそこにモリゾーがいるぞ~!!!
って話、萌えません?

「遠野物語」とか「風の又三郎」とか、書いちゃうよね!
私にとって、東日本エキスが純化されたゾーンが岩手なんですよ!

宮澤賢治って、個人的にはそんなに好きではないんだけど、でもあの世界観はすごく引っかかる。
「異界」感ハンパない。



話は関東に戻って。

子どものころ読んでた児童文学の世界観、
その「異界」感は、フィクションとしては面白いんだけど、
自分にとってはリアリティ無くて、
空想というかファンタジーだと思ってた。


それが、大人になってから関東に行くと、
空想でもファンタジーでもなくて、
「あ、ホントにありそう…」
って感じるんですよ。

日本の首都は東京だし、人口も関東が抜群に多いわけだから、国民の多数派の感覚が児童文学に反映されるってのは、まあ仕方ない。

カブトムシ大百科だって、そういう視点で書かれてたわけだ。
「雑木林って、ねえなー」って、
西日本の男子、思ってませんでした?


子どものころから、「引っかかってた」ってほどでもないけど、
何だかいろんなことが、腑に落ちてきたのです。

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次回、12月2日(水)アップ予定。