「芸能は変化するのかしないのか?」最終回、強行着陸いたします。


★腸内フローラ説


これは「もともと幅のあるもの」説の発展形、
なんだけど同時に、これまでの全ての説を包括しています。


以下は架空のお話。

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ある郷土芸能の保存会員が何十人かいて、
その踊り方のスタイルは一様ではなく、
Aさん流、
Bさん流、
Cさん流、と3通りあった。


90年代に田楽座が習いに行ったときには、Aさん流が多数派で7割くらい。
Bさん流、Cさん流はちょっとしかいなかった。

だから当時の田楽座員は、Aさん流を「教科書」と仮定して習ってきた。


次に、2000年代に習いに行くと、
Bさん流が多数派だった。
最近はBさんが指導の責任者となり、教え方を一新したとのこと。

田楽座も「なるほど!」と、教科書を改訂することにした。



そして2010年代には、
まさかのDさん流が主流
「Dさん? そんな人どこにいたの?」って話だが、
話を聞いてみると、実は
Aさんのお爺さんがやってたやり方を、
若手のDさんが掘り起こして、
みんなが
「そういえば昔はみんなそうやって踊ってたぞ」
「んだんだ、オラのジサマもそう言ってただ」「そうだそうだ」
ということになったらしい。

田楽座も教科書を改訂、これで決定版とした。



そして2020年。

習いに行くと、地元はあっさり
Aさん流が主流
に戻っていたそうな。


(重ね重ね、この物語はフィクションであり、特定の団体や出来事をモデルにはしていません。)
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さて、この現象は「本当に変化してる説」を弁護してると同時に、
「昔っから変わっとらん!」説にも、一定の根拠を与えてる。


思うに、こういうことなんじゃないか。

Aさん流7割、B流2割、C流1割、みたいな割合自体が、そもそも「動的」なものなんじゃないか。

「動的」ってのは
例えば、台風予報とか見てると、台風とか天気図って刻一刻と変化してて、動的じゃないですか。
天気図なんて持ち出さなくても、空を見上げれば雲の形はどんどん変化してるよね。



ある時代の一瞬を切り取って、
「Aさん流が7割で、次にB、その次にC」
ということを観察しても、確かに事実には違いないんだけど、それは
「去年は雲の形はこうでした!
 今年は変わったんですか?」
と言ってるようなものなんじゃないか。



「昔のビデオではこうでした」というのは、地元の人からしたらかなり表面的なことであって。
昔の演技も今の演技も、元から存在する変動幅の範囲内での変化であって、
それは変化してることのうちにカウントされないんじゃないか。

という説を田楽座で話していたら、マナミが
「腸内フローラですね!」

全員「? ? ?」


腸内の細菌って、善玉菌とか悪玉菌とかいろいろあるらしいんだけど、
その割合が常に変化してるそうな。

だから90年代の腸を解剖して、
「人間の腸内細菌は、A菌が70%、B菌20%、C菌10%である」と断言しても、あんまり意味がないんだって。
どんどん変わるから。雲の形みたいに。

(腸内フローラという用語が、例えとして適切かどうかはビミョーだけどインパクトがあったので、自分の中で腸内フローラ説と名付けました。)

だから芸能は、
ビデオとか観察記録を見れば、明らかに「変化してる」んだけど、

「昔っから変わっとらん!」も、それはそれで真実なのだと思う。



結論:芸能は「変化している」と同時に「変化していない」。


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次回、10月14日(水)13時アップ予定。

今週末は10月11日(日)飯田公演、来週は18日(日)大阪公演です!!!